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洗濯物

2015年02月01日
気持ちよく晴れ上がった空。ところどころに雲が泳いでいる。眩しい太陽の光が家から庭に出てきた少年の体を包み込む。
彼は、天野睦。ちょっと不思議なこの世界において不死鳥の血を飲んだ不老不死者だ。
「んん〜、よく晴れてるな今日は。」
微笑んで空を見上げる赤い瞳。
黒い、少し癖のある艶のある髪の毛。白い肌。薄い緑の7部丈のシャツを着て、下は黒いズボン。16で止まっている体にしては細いが、それでもかなりしっかりしている。
洗濯物を入れた籠を持って、物干し竿まで歩く睦。
後ろから声がかかった。
「睦!掃除するからここあけといていいか?」
蒼い瞳に短い金髪。これまた輪をかけて白い肌。黒い長いベストみたいな服の下に白のカッターシャツ、そしてズボン。
左耳には銀に光るピアスをしていて、その耳は尖っている。
彼は、睦と同居している。シアン・キュザーだ。
「あぁ、いいよーサンキュー!」
睦は洗濯物を干し始める。家の中から聞こえる掃除機の音。
睦が手に持っているのはシアンのシャツ。ハンガーにかけ、物干し竿に引っ掛ければ、風に乗って遊んでいるように見える。
小さい頃の彼を思い出す。
「……ふふっ。」
睦の後をついて回っていた。そんなシアンを本当の弟のように思っていた。
そっと後ろの窓から見えるシアンを見つめる。
表情を作ることが下手なその顔はかたいが、それがまたなんだか良い。
次々と洗濯物を干していく睦。
「あ。また穴開けてやんのまったく…」
膝に穴が空いたズボンを見て苦笑する。喧嘩っ早いシアンはしょっちゅう服に穴が空いている。
「睦ー…うおっお前まだ干しとったんか。大丈夫?手伝おうか?」
シアンは庭に出てきた。
「ん?あはは、いいよいいよ座ってろよ。」
明るく笑いながらそういう睦。シアンは籠から洗濯物を取り出してかける。
「この遠慮男がー。頼れっつーのまったく。」
シアンはさっさと干してしまうと腰に手を当てて微笑み、睦を見る。
洗濯物が風に煽られてフワフワと揺れている。
「なーんかさ。ちっちゃいときのお前見てるみたいで可愛くね?これ。」
「どういうことだよ、見えねぇよ全然!」
笑いながら突っ込むシアン。その笑顔がなんとも…綺麗だった。
他に言い表しようがないのだ。
「見えるって!ほら見てみ?」
「んなこといってもな俺自分とか見れねぇよw」
確かにそうだ。
「ちぇーwわかったわかった。」
睦の前髪が風に吹かれてなびく。
蒼と赤の瞳には
安らぎが見える。

洗濯物は揺れる
風に遊ばれ
日の光と話し

2人は家に入っていった。
また今日も、騒がしい1日が始まるのだろう。